第1章
徳宮一輝(とくみや かずき)が新たに目をつけた女は、気性が激しかった。
40億円を積まれても、その女は貧しい恋人と別れようとはしなかった。
腹を立てた一輝は、彼女を半月湾の別荘に閉じ込めた。
7日もの間。
使用人から聞いた話では、徳宮様はなかなかのやり手らしい。死んでも屈しないような女でさえ、最後にはしおらしく従順にしてしまうのだという。
事が済むと、一輝はいつものように私・清水心咲(しみず みさき)のところへ来て、慣れた様子で謝った。
これで何度目の不倫なのか、もう私には数えることも区別することもできなかった。
ちょうど今だって、先月彼のベッドに上がった若い秘書のことで、私は一輝と冷戦中だった。
けれど彼はとっくにその秘書に飽き、新しい女に乗り換えていた。
そう思うと、私の嫉妬さえ、ひどく滑稽で無意味なものに感じられた。
いつからだろう。彼は不倫の言い訳すらしなくなった。
ただ面倒くさそうに、「正式な妻はお前一人だ。それじゃ足りないのか?」と、そう言うだけ。
いつしか私自身、そんな彼を納得させるのではなく、自分自身に言い聞かせるようになっていた。
不倫をしない男なんていない。ましてや港市そのものを手中に収める一輝なら、なおさらだ。
ただ遊んでいるだけ。心さえ私のもとにあるなら、それでいい。
そう思っていた。
だが知ってしまったのだ。あの女はたった10日で、一輝に自分の名前を徳宮家の戸籍に書き込ませたということを。
その時、私は悟った。一輝は本気で心を動かされたのだ、と。
その後、私は一輝の母親を自ら訪ねた。
「私の負けです。私はこの街を離れます」
「愛に勝ち負けなんてないんだよ」
彼女は私を見つめ、惜しむような目をした。けれど、引き止めはしなかった。
ただ、静かに尋ねた。
「……戻ってくるつもりはあるの?」
かつて一輝と結婚するため、私は徳宮家の屋敷の前に一晩中跪いた。
両親と縁を切ることも、一文無しになることも厭わなかった。
そして、二度と港市を離れないと誓った。
けれど今、これが最後だと思いながら、私は潮風を頬に受けていた。
もう二度と、ここへ戻ることはない。私は、そう確信していた。
第1話
一輝が安藤青葉(あんどう あおば)を私のプライベート牧場へ連れて行ったと知り、私は車を飛ばした。
次の瞬間、ドンッという轟音が響き、一輝の愛車は見るも無残な姿になった。
けれど一輝は眉一つ動かさなかった。ただ、慣性でぶつけて腫れ上がった私の腕に気づいた途端、その目がすっと翳った。
「痛むか?」
「どうして、彼女をここに連れてきたの?」
私は彼の手を振り払い、震える声で問い詰めた。
「どうして?」
この牧場は、結婚3周年の記念に一輝が私へ贈ってくれたものだった。
そして、港市で私に残された最後の逃げ場でもあった。
かつて港市の芸能記者たちは、冗談めかしてこう言っていた。
一輝が寝た女なんて、そこら中にいる、と。
宴会、ショッピングモール、クルーズ船。それどころか、私たちの寝室のベッドの上にまで。
けれど、ここだけは違った。ここだけは、私だけの聖域だ。
「ただの牧場だろ。お前が気に入ったなら、また別のを買ってやる」
一輝は、なんでもないことのように言った。
その表情を見る限り、彼はもう、この牧場の由来すら覚えていないのだろう。
彼が私に贈ってくれたものは、あまりにも多かった。
記念日の贈り物、季節の贈り物、怒らせた時の埋め合わせの贈り物、機嫌がいい時の贈り物……そして、不倫の償いとしての贈り物。
彼の無関心に胸を痛める暇さえなかった。ふと視界の端に、青葉が乗っている白馬が映った。
私は息を呑んだ。カグヤちゃんは、私が自分の手で取り上げ、自分の手で育てた仔馬だった。
結婚3周年を迎えた頃、私は妊娠していた。
けれど胎児は早産となり、生まれてわずか6時間で、心肺機能不全のためこの世を去った。
若い頃の事故の後遺症で、私はもともと身体が弱かった。
これが6度目の妊娠だった。子どもを守るため、私は7ヶ月もの間、ベッドからほとんど動かず安静にしていた。
それでも、最後にはすべてが水の泡になった。
医師には、もう二度と子どもを授かれない可能性があると言われた。
生きる気力を失い、ひどく落ち込み、一度は自ら命を絶とうとさえした。
そんな私のもとへやって来たのが、カグヤちゃんだった。
難産で、母馬の腹の中に引っかかって出てこられなかった。私は自分の手で、胎衣に包まれた小さな仔馬を取り上げた。
ふらつきながら立ち上がった仔馬が、最初に近づいてきたのは私だった。
何も知らないような瞳で私を見つめ、私を母親だと思ったのだ。
それから私は、カグヤちゃんを自分の子どものように育ててきた。
おとなしくて、人懐っこくて、生まれてから一度も怒ったことがない。
なのに今、青葉の手に握られた鞭が、何度も何度もカグヤちゃんの身体へ激しく振り下ろされていた。
第2話
一輝は私の視線を追い、その先にいる、不器用ながらも負けん気だけは強い馬上の青葉を見た。思わず口元が緩む。
「青葉が新しく受けた時代劇に、乗馬のシーンがあるんだ。あいつは一度も馬に乗ったことがないから、カグヤちゃんが大人しいし、乗せた」
「降ろして」
歯がガチガチと震えていた。
一輝は、私が嫉妬していると思ったのだろう。口元をわずかに吊り上げる。
「たかが1頭の馬だろ。もう少し大らかになれよ」
私は踵を返し、牧場の扉を押し開け、カグヤちゃんに乗っている青葉の前へ立ちはだかった。
「降りて!」
手綱に触れるより先に、おとなしかったカグヤちゃんが突然暴れ出した。激しく前脚を跳ね上げ、その蹄が今にも私の身体に振り下ろされようとした。
その瞬間、一輝が私の横を素早く駆け抜けていった。
けれど、私には一瞥もくれなかった。その目に映っているのは、もう一人の女だけ。
「青葉!」
私はすべてを諦めるように目を閉じた。けれどカグヤちゃんは私だと気づいた。
私を傷つけまいと、身体を限界まで捻り、嘶きながら遠くへ駆け出していく。
「きゃあああ!」
青葉は馬の背にしがみつき、悲鳴を上げた。
一輝は素早く銃を抜いた。数発の銃声が響き、白い影がその場に崩れ落ちた。
「カグヤちゃん!」
私は叫びながら駆け寄った。そして、目の前の光景に心を引き裂かれた。
カグヤちゃんはまだ目を開けていた。真っ白だった毛並みは、血で真っ赤に染まっていた。
けれど一輝は、私よりも先に動いていた。無傷のまま気を失った青葉を抱き上げ、医師を呼ぶ。
そして私へ向けた目には、背筋が凍るほどの冷たさが宿っていた。
私を見て、彼は言った。
「……狂ってる」
「この女には、カグヤちゃんの命を償わせる!」
私は病院へ駆け込み、カグヤちゃんを殺したあの拳銃を一輝から奪おうとした。
そこでようやく、一輝の顔から余裕が消えた。威圧感のある黒い瞳に怒りを滲ませ、彼は私を乱暴に振り払った。
「いい加減にしろ!お前が勝手に中へ入って、馬を驚かせなければ、こんなことにはならなかっただろ!もうこれ以上、無茶苦茶なことを言うのはやめろ!」
私は信じられない思いで目を見開いた。
今日の事故を、私が故意に起こしたと彼は思っている。
今にも崩れ落ちそうな私を見て、一輝も言い過ぎたと気づいたのだろう。
けれど何度か深く息を吸ったあとも、その声は冷たいままだ。
「今のお前の姿を見てみろ。徳宮家の妻としての品位が、どこにあるんだ」
ガラス扉には、取り乱し、見る影もなくなった私の姿が映っていた。
私はかすれた声で呟いた。
「離婚する。徳宮家の妻なんて、もうやめる」
もう疲れた。本当に、疲れ果てた。
一輝の顔にも疲労が滲んでいた。彼は黙り込んだ。
以前のように激昂して私の頬を掴み、別れの言葉を撤回するよう迫ることもしなかった。
10年前、初めて港市へ来た時、私は初めて一輝の身分を知った。
彼は両親に隠れて私と婚姻届を出していた。
それが両親に知られた後、家の掟による制裁を受け、死にかけるほど殴られても、私と別れるとは決して口にしなかった。
「死んでも、お前とは別れない」
そう言っていた。
なのに今……
長い沈黙のあと、一輝はただ冷たい目で私を見つめ、言った。
「馬鹿なことを言うな、心咲。お前に俺を捨てられるわけがない。
忘れたのか?俺と一緒になるために、お前はもう両親と縁を切った。お前には俺以外、何も残っていない。
だから、もう離婚をちらつかせて俺を脅すな。もし俺が本気にしたら……お前はこれから、どこで暮らすつもりだ?」
一輝の言葉が、耳元で響いた。
私は悟った。
私は、賭けに負けたのだ。
第3話
10年前、一輝は身分を隠して港市を離れ、商才を磨くために別の都市へと赴いた。
あるパーティーで、当時はまだ面識のなかった一輝は、私が何かを仕込まれたワインを飲んでいることに偶然気づいた。
助けようとした彼が目にしたのは、私が変態男の頭をワインボトルで思いきり殴りつける、凄惨な場面だった。
正気を保つため、私は自分の太ももにガラスの破片を突き刺し、肉が裂けて血まみれになっていた。
一輝が私にアプローチし始めたのは、あんなにも負けず嫌いな女を、それまで一度も見たことがなかったからだという。
付き合い始めて間もなく、彼は私を港市へ連れて行った。
そこで私は初めて、テレビの中だけのものだと思っていた名家や財閥が、本当に存在するのだと知った。
徳宮家が私を嫁として迎え入れるために出した最初の条件は、両親と縁を切ることだった。
身分の釣り合わない嫁を、しぶしぶ受け入れることはできても、私の貧しい親族が金をたかりに来ることなど、到底容認できなかったのだ。
私を辱めることなど、徳宮家にとってはほんの序の口だった。
あれが、私が初めて正式に離婚を口にした時だった。
私の両親は、ごく普通の人だった。でも、私を心から愛してくれていた。
私は何も言わず、一人で船に乗って港市を離れることにした。
それを知った一輝は埠頭まで駆けつけ、何のためらいもなく冷たい海へ飛び込んだ。
到底追いつけるはずもないフェリーへ向かって、必死に泳いだ。
幼い頃、敵対する一族にさらわれ、公海まで連れ去られたことで、一輝は本当は水が怖かった。
それでも私のために、その恐怖を乗り越えた。
まるで神様まで私たち二人を哀れんだかのように、フェリーはその場で故障した。
甲板の上で私は泣き、海の中で彼も泣いていた。
あの時、海へ飛び込んだ一輝を見て、私はこの人に一生を賭けることを決めた。
……
医師が、青葉が目を覚ましたと告げた。一輝は私を振り返ることなく、その場を去っていった。
「お前は先に家へ帰って、頭を冷やせ」
どうして、こんなにも冷たく私を突き放せるの。私は地面から立ち上がった。
病室へ飛び込み、青葉に復讐してやりたい。
そう思うほど膨れ上がっていた嫉妬と恨みが、病室から聞こえてきた声によって、一つ、また一つと打ち砕かれていった。
「痛いよ、噛まないで」
青葉の声は、甘えるようにわがままだった。
「口の中、タバコ臭い。もう吸わないって約束したでしょ?」
一輝は、彼女が無事だったことへの安堵を滲ませながら、彼女を胸に抱き寄せた。
「お前に驚かされたんだ。だから、我慢できなくて1本だけ吸った。
今回だけだ。これで最後にする」
一輝が、青葉のためにタバコをやめた。
私はその場に立ち尽くした。かつて記者が一輝にインタビューしたことがある。
「徳宮社長の人生に欠かせないものを3つ挙げるとしたら?」
彼はこう答えていた。
「心咲、徳宮家、それから……タバコ」
私でさえ、一輝にタバコをやめさせることはできなかった。
妊活をしていた時期でさえ、彼はただ本数を半分に減らしただけだった。
胸の奥が痛み、私は立っていられなくなった。
痺れた手では、目の前のドアを押し開けて、彼と正面から対峙することさえできなかった。
一輝の心は、本当にまだ私のもとにあるのだろうか。
私は逃げるようにその場を去った。
3日後、一輝は私のもとへ、1頭の小さな仔馬を届けてきた。
私はその仔馬を、自分名義の別荘へ連れて行った。
この別荘は、かつて一輝が別の女と私たちの新婚のベッドで寝たことに腹を立て、私がその家を燃やしたあと、彼から償いとして贈られたものだ。
リビングに飾られている絵もそう。
以前、秘書との不倫現場を私に見つかった時、彼が贈ってきたものだった。
壁一面に並ぶハイブランドのバッグは、初めて不倫を見つけた時に贈られたもの。
金庫の中に眠る高級オーダーメイドの宝飾品は、彼が別の女を妊娠させ、その後始末を私がした時に贈られたもの。
……
確かに私は、一輝が言った通り、負けず嫌いだ。
けれど、何度も何度も壁にぶつかっていれば、どんな人間だって疲れ果てる。
ここへ来たのは、結婚した時に一輝に隠れて交わした賭けの証文を探し出し、一輝の母親に約束を果たしてもらうためだった。
けれど、本当に徳宮家の屋敷に着いたとき、私と一輝がかつて一緒に跪いた石畳が目に入った。
私と結婚するために、一輝が食事も水も断ち、命を懸けてまで決意を貫こうとした姿が、今も鮮明に蘇ってくる。
彼は本当に、私のためなら死ねたのだ。
だから今になって、認めざるを得なかった。私はまだ、彼を愛している。
一輝と別れることは、自分の肉を引き裂くことと同じだった。
ほんの数秒考えただけで、私はまた自分自身を言い聞かせ始めていた。
不倫をしない男なんていない。
ましてや、港市そのものを手中に収める一輝なら、なおさらだ。
ただ遊んでいるだけ。心はまだ私のもとにある。
私は今も、彼の正式な妻なのだから。
ただ……まさか徳宮家の屋敷で、青葉と鉢合わせすることになるなんて、思いもしなかった。
第4話
「ずいぶん耳が早いんだな」
私が現れたことに、一輝はさほど驚いていないようだった。
「反対しに来たのなら、これだけは言っておく。徳宮家のことを、お前に決める権利はない」
一輝は警戒するように青葉を庇い、その身体を自分の後ろへ隠した。
反対って、何に?
私はわけが分からず、胸の奥に不安がよぎった。
一輝の母、徳宮明美(とくみや あけみ)は私を一人で部屋に呼び、戸籍謄本のあるページを指さした。
そこにはこう記されていた。
【徳宮青葉 続柄 養女】
頭から冷水を浴びせられたように、全身が凍りついた。私は信じられない思いで、何度もその文字を見つめた。
「一輝の意向では、青葉とは婚姻の届けが出せない以上、彼女に名分を与えるために、養子縁組で入籍させたということなの」
明美の口調は淡々としていた。まるで、こういう光景をすでに見慣れているかのように。
「あなたも知っているでしょう。一輝の父親が亡くなってから、徳宮家はすべて一輝のもの。あの子を止められる人間なんて、もういないのよ」
10年前、確かに私は一輝と婚姻届を出した。
けれど、徳宮家に何百年と続く伝統的な考え方では、家族に認められた者だけが真の徳宮家の奥方と見なされるのだった。
法律上、私は一輝の妻だった。それでも、彼の一族は私を認めなかった。
つまり私は、名ばかりの妻。
私はそのことを、ずっと恥に思っていた。
一輝は、必ず私を家族に認めさせると固く誓った。
けれど私は10年努力しても、何の結果も得られなかった。
青葉はたった10日で、当然のように徳宮家の一員になったのだ。
そうだったのだ。彼は忘れていたわけじゃない。
ただ、「妻」の座が、もう私のものではなくなっただけ。
一輝は、本気で彼女を愛してしまった。
私は、一輝が誰かを愛する時の姿を知っている。
だから、彼に愛されなくなったという現実だけは、どうしても受け入れられなかった。
たまに他の女に心を奪われるくらいなら、見ないふりもできた。
けれど、彼が今も私だけを愛しているなんて、自分自身に嘘をつくことはできない。
私は、完膚なきまでに負けた。
バッグの中でくしゃくしゃになっていた賭けの誓約書を、私は少しずつ広げた。
普段は冷淡な明美が、そこに書かれた文字を目にした瞬間、整った無表情に初めて動揺が浮かんだ。
「……まだ持っていたのね」
しばらくの沈黙のあと、彼女はため息をついた。そして、息子を庇うように言った。
「一輝は、あなたと別れるつもりなどないのよ。ただ……」
明美が私を引き止めようとしている。かつて、私が徳宮家へ嫁ぐことに最も強く反対していたのは、他でもない彼女だったのに。
なんて皮肉なのだろう。今の私は、もう港市の誰もが認める徳宮家の奥さんだった。
口の悪い記者たちでさえ、とうに私を「田舎から来た清水さん」などと呼ばなくなっていた。
それどころか、かつては私を認めようともしなかった気難しい姑までもが、私を引き留めようと、私の立場を受け入れてくれている。
なのに、あの日、私に永遠を誓った一輝だけが、変わってしまった。
私は明美の言葉を遮った。そして、ほとんど決別を告げるような声で言った。
「離婚します。私は港市を出ます」
明美の部屋を出たところで、私は偶然、青葉の甘えるような声を耳にした。
「もし奥さんが、私とあなたが一緒になることを受け入れてくれなかったら?私と離婚してって言われたら、どうするの?」
「彼女が俺と離婚するはずがない」
一輝は、考える素振りすら見せなかった。
「お前は知らないんだ。あいつがどれだけ俺を愛してるか」
そう言って、確信に満ちた口調で眉を上げた。
「信じられないか?賭けてみよう。今回、あいつが俺とどれだけ冷戦を続けられるか」
一輝は少し考え、勝ちを確信したように言った。
「1週間以内に、あいつはお前の存在を受け入れて、何事もなかったように俺のもとへ戻ってくる。俺はそう賭ける」
なんて悲しいのだろう。
彼がそんな言葉を口にするのを聞いても、私はまだ彼を愛していた。
けれど、誰かの愛は、共に生きるためにある。
そして、誰かの愛は、尊厳を守るためにある。
今度は、一輝、あなたの負けよ。
港市を離れる前に、私は最後にもう一度だけ、この街の潮風を浴びた。
そして、あの日に明美から最後に聞かれた言葉を思い出した。
「……戻ってくるつもりはあるの?」
私は首を横に振った。
もう二度と、戻らない。